退職金規定には、大きく3つの給付形態があります。
それぞれに長所・短所がありますが、それぞれの特徴を上手にコントロールすることで、経営者と従業員の双方に喜ばれるような規定を作ることが可能になります。
1.退職金規定の3つの形態
年数別定額制
勤続年数に応じて、退職金が決まる、非常に単純な給付形態です。
生活保障説の影響が強い給付形態と言えます。
生活保障説とは、退職後における生活を保障するために支払われる給付であるとする考え方です。
基準給与連動制
基準給与に、勤続年数に応じて定められた係数をかけて退職金額を決める形態です。
賃金後払いの考え方が影響している給付基準です。
賃金後払説とは、労働者が在職中に受取るべきであった賃金部分を退職に際して受取るものであるとの考え方です。
ポイント制
従業員の能力評価を退職金に反映させる給付体系です。
功労報償説の色合いがつよい給付制度と言えます。
功労報償説とは、退職金をもって長期勤続または在職中の功績に対する報償とするという考え方です。
2.3つの給付体系の概要
給付体系に関する経営者のイメージ
これからの退職金制度のあり方
月例賃金(基本給)と分離
基本給と連動した制度では、賃金の後払いと考えるにしても、退職時の基本給を基準とするため、大抵の場合は、その退職者の最大基本給が基準となってしまいます。
・賃上げと退職金増加を切離すことの実現
・退職金抑制のために諸手当を厚くするなどして、賃金体系を歪める必要がなくなる。
・年俸制に移行する場合も対応しやすくなる。
能力要素と業績要素の重視
・能力要素を取り入れることで、必要な人材を確保しやすくなる。
・業績要素は、必要な人材の定着に役立つ。
退職金の賃金化と廃止
・労働力提供時点での賃金水準を高くしたり、労働力の流動化を促進する作用が期待できる。
※欲しい人材が定着しなくなったり、中小企業の場合、期待されるほどの賃金水準アップには繋がらない場合もある。
年数別定額制の特徴
年数別定額制において能力・業績を退職金に反映させる方法
年数別定額制においても、退職金のテーブルを複数用意したり、功労加算金を加算率にすることで、能力・業績を退職金に反映させる方法があります。
①退職金のテーブルを複数用意する方法
・基本退職金・・・一律の規定で全従業員に適用
・特別加算金・・・職種、職能に応じて特別加算金のテーブルを適用
退職金は、基本退職金+特別加算金とする。
②基本退職金のテーブルに加算給付率を設定して加算する方法
・退職金のテーブルは1つ
・職種、職能に応じて退職金加算率を設定する
退職金は、退職金額×加算率とする。
※どちらの方法でも、特別加算金を抑えるために昇格に影響がでたり、その逆に特定の職種に集中してしまった結果、退職金が増大してしまうなどの影響がでる場合があります。
③基本退職金以外に特別加算規定を設定して、都度加算額を決定する方法
年数別定額制をポイント制で表現する(定額制を併用したポイント制に活用)
年数別定額制の要素をポイント制退職金に取り入れると次のようなポイント設定が考えられます。
退職金は、累積ポイント×単価(×支給割合(自己都合・定年等))で計算します。
※黄色の部分の増加率を変えることで、到達金額を調整します。
基準給与連動制の特徴
基準給与連動制において能力・業績を退職金に反映させる方法
・基準給与連動制におてい能力・業績を退職金に反映させるためには、退職金算定の基礎となる基準給与(基本給)に能力・業績が反映されなければなりません。
基準給与(基本給)に能力・業績を反映する評価基準の一例
ポイント制の特徴
ポイント制に従来の年功型等の予測が容易な制度を組み合わせる方法
・勤続年数ポイントのテーブル(年功型)と評価ポイントを合算する方法
例)評価ポイントは、毎年更新することで、能力や業績を反映しつつ、勤続年数ポイント(年功)とは別に加算することで、年功が主体のポイント制とする
・勤続年数ポイントは、従来の規定に基づく自己都合退職金の範囲で設定し、評価ポイントを合算する方法
例)自己都合ポイントは、年数別定額制の金額をポイント化するだけで、会社都合(定年)の場合だけ、評価ポイントを加算する
ポイント制退職金制度のバリエーション
まとめ
退職金規定の給付形態を検討するには、以下のサイクルに基づき確認する必要があります。