退職金規定の作成と就業規則の見直し

退職金規定の作成と分析

退職金とは、労働契約期間の満了(定年退職)または転職などの途中終了を事由として、企業が従業員に支給する金銭などを指します。
現在多くの会社で退職金規定により、退職金が制度化されていますが、退職金制度を設けるか否かは企業の自由な判断とされています。

法令上は退職金規定を定める義務はありません。

ですが、現状は多くの企業が退職金制度を導入しています。

企業規模別退職規定の設定割合

・1000人以上の企業で92.3%
・300~999人の企業で91.8%
・100~299人の企業で84.9%
・30~99人の企業で77.6%

※規模が大きい会社ほど退職金制度を設ける割合が高くなっていることがわかります。

メリット

企業側は導入することにより、従業員の勤労意欲を引き出すことや良い人材の確保、雇用調整のしやすさや、人件費の軽減になります。

デメリット

資金繰りの悪化や一度導入すると将来に渡ってその制度を維持することが求められますので業績が悪化したとしても支払わなければならないという点です。

退職金制度の導入はメリット・デメリットを比べながら慎重に判断しなければなりません。


退職金制度の最低条件

※労働基準法15条1項、89条1項3号の2(労働基準法施行規則5条1項4号の2)による

・適用される労働者の範囲
・退職手当の決定方法
・計算および支払の方法
・退職手当の支払の時期


これらの事項を労働契約の締結の際に明示し、就業規則に規定しておかなければならない。

これらの事項は就業規則の本体で定めることも「退職金規定」でとして別の規則にすることも可能ですが、何らかの規定に明記する必要があります。

・適用される労働者の範囲

パートや正社員などの従業員はそれぞれ労働条件が異なりますが、退職金制度の対象となるのは正社員の場合が多く、その旨を明確にしておく必要があります。

・退職手当の決定方法

必要とされる最低勤続年数や退職事由による区別などを決めます。

・計算および支払いの方法

算定基礎額(退職金支給額を計算する際の基礎となる金額。)×支給率(退職事由や金属年数に応じた係数)
を基本とし、必要に応じて加算額(特定の事由に該当する従業員の退職金に加算されるもので役職加算や功労加算などがある)
懲戒事由による減額・不支給を定めるのであればこちらも明記しなければならない。

ポイント制退職金制度…最近多いのがポイント制です。人事評価や内部資格等、在職中の様々な要素をポイント化して積み上げポイントに応じて退職金額を支給するものです。
累計型と退職時条件型に分けられます。

・退職手当の支払いの時期

一時金であるならば賃金と違って具体的に何日に支払うという定めは不要。
企業により支払いの時期は異なりますが、多くは退職後1~3か月以内に設定されています。

支払いの形態

退職金制度は支給形態により分けられます。
中小企業の退職金制度は退職一時金のみで大企業は退職一時金と退職年金の併用になることが多くなっています。
 退職一時金:退職金を一括で支給
 退職年金: 退職金を年金として支払い(企業年金とも呼ばれます)

死亡退職金についての定め

退職金規定を設けるにあたり従業員が在職中に亡くなった場合に遺族に支払う旨の定めも設けることになります。
算定基準は通常の退職金に準ずることになります。
死亡退職金特有の事項として、死亡退職金の額を生存退職金よりも多く設定したり、業務上の死亡なのかそうでないのかとで金額に差をつけるなどが挙げられます。

積立方法

中小企業退職金制度、特定退職金共済や生命保険による社外積立や銀行預金などの社内積立も挙げられます。社外積立は選択肢が豊富なのが魅力です。一方で、社内積立は必要に応じて積立金を事業資金に充てられるなどの柔軟性が高いため導入する中小企業が多くあります。

退職金の原資の確保として生命保険や中小企業退職金共済、などが挙げられます。
それぞれのメリットや注意点について把握しておくことが必要です。

・生命保険

養老保険の福利厚生制度を導入すると支払保険料の半額を経費に算入することができます。
解約返戻金のある保険ですので従業員の退職時期に合わせて計画的に解約返戻金の額を設定することにより、計画的に退職金を貯めることができます。
死亡保険金の保証も付いています。

・中小企業退職金制度

中小企業が従業員の退職金に係る掛金を拠出し、企業間の相互扶助によって退職金の支払いを確保するために国が設けた共済制度です。
従業員が退職した際に中退共本部から直接支払われるので手間がかかりません。
掛金は全額事業者の負担となるが全額非課税扱いの経費になる点や積み立ての計画がしやすく、利回りがある事です。

・特定退職金共済

特定退職金共済は特定の業種を対象に国が定めた制度です。月額最低1口1000円から最大3万円まで掛金を設定することが可能になります。月額3万円までは経費に出来るため給料の上積みにならない。

共済のデメリットは早期の退職や懲戒免職、懲戒解雇のケースでも支払った掛金は全額従業員に渡ってしまうということです。
業績が厳しくなったとしても生命保険のように会社の運転資金に回すことができないのがデメリットです。

まとめ

退職金制度の導入は人材確保や人件費の軽減などのメリットもありますが一度導入すると就業規則の一部として法的拘束力を持つことになるので、メリット・デメリットを比べながら財源の確保も含めて慎重に行わなければならないということになります。

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